老人ホームへの入居により家に誰も居なくなる、親が住んでいた家を相続したなどの理由で、空き家の扱いに困っている方は多いでしょう。
新しく住む人もおらず、頻繁に様子を見に行けないため管理が大変だと感じることもあると思います。
総務省統計局が発表した平成30年住宅・土地統計調査によると、日本の空き家率は13.6%です。
10軒につき1〜2軒は空き家である計算になるため、空き家問題は意外と身近な存在といえますね。
空き家をそのまま保有しておくだけでなく、賃貸物件として貸し出したり売却して手放したりと、さまざまな方法があります。
そこで本記事では、空き家が自分の手に渡ったときの選択肢のひとつに考えられる、空き家を売却する方法を4つ紹介します。
今回登場する方法は、以下の4つです。
- 中古住宅・古家付き土地として売却する
- 更地にして売却する
- 不動産会社に買取を依頼する
- 空き家バンクに登録する
ほかにも、空き家の売却にかかる費用や税金・経費を抑えるコツ、注意点をまとめて解説します。
最後まで読んで、納得のいく方法で空き家を売却しましょう。
空き家を手放したい時の売却方法4選
たとえ空き家であっても、保有し続ければ固定資産税と都市計画税が毎年課せられます。
自治体や空き家の広さにもよりますが、誰も住んでいない家の税金を何万円も払い続けていることになります。
管理の難しさも相まって、空き家を手放すことを検討している方もいるでしょう。
空き家を手放す時によく取られるのが、「売却する」という選択肢です。
そこで今回は、空き家を売却するときの主な方法を4つ紹介します。
- 中古住宅・古家付き土地として売却する
- 更地にして売却する
- 不動産会社に買取を依頼する
- 空き家バンクに登録する
空き家を売却するときは片付け費用や税金などの経費がかかりますが、空き家を売ったお金を充てられるため、思ったほど経済的な負担がかからないケースもありますよ。
以下の見出しで、それぞれについて詳しく解説します。
中古住宅・古家付き土地として売却する
手間やお金をかけずすぐに空き家を売却したい方は、中古住宅・古家付き土地として売却するのがおすすめです。
中古住宅・古家付き土地として売却する魅力は、解体費用をかけずに空き家を手放せること。
親の遺産を相続する場合は売却益を現金化することで、兄弟で平等に分配しやすくなるのもメリットです。
住宅の価値は、築20年を境に大きく変わります。
築20年以上の物件は住宅としての価値がなくなり、「古家付き土地」として土地のみの価格で売却することになるのです。
自分が保有している空き家の築年数を確認し、中古住宅と古家付き土地のどちらで売却するのか決めておきましょう。
築20年以内なら「中古住宅」、築20年以上が経過しているのなら「古家付き土地」として販売するのがおすすめです。
築20年未満の中古住宅は同じ場所に建っている似たような新築物件よりも価格が低いため、低価格で住宅を購入したい人にニーズがあります。
築年数が増えるにつれ住宅としての価値は下がっていくので、早めの行動を心掛けてみてください。
中古住宅・古家付き土地を売却するときは、不動産会社と契約したうえで売却活動を開始します。
査定結果の高さだけで判断するのではなく、空き家の取り扱い実績が豊富なところと契約を結びましょう。
更地にして売却する
空き家を手放すときは、建物を解体して更地にしたうえで売却することもできます。
雨漏りやシロアリなどが原因で、建物に人が住める状態でないときによく選択される方法です。
解体費用はかかりますが、解体にかかった経費を上乗せして売却価格として提示できるケースもありますよ。
更地にして売却するメリットは、古家付き土地よりも高額で売れやすいことです。
購入者側からすると、古い建物を解体する手間がかからないのが魅力的に映る場合があります。
更地にするときは建物を壊すだけでなく、庭の木やブロック塀、地中に埋まっている浄化槽なども取り除かなければなりません。
解体業者に見積もりを依頼するときは、建物が建っている土地の外縁や地中にまで気を配りましょう。
ただし、更地にしたところで買い手が見つからないと、空き家が建っていた時よりも多くの税金がかかってしまいます。
建物が建っている状態の土地は減税措置の対象なのですが、ただの更地だと本来の税額が請求されるのです。
一般的に固定資産税は3〜6倍、都市計画税は3倍上がるとされています。
買い手が見つからず税金が跳ね上がるリスクを避けたいときは、「更地渡し」の約束で売却することも検討してみましょう。
「更地渡し」とは古家付き土地の買い手が見つかった後、売主側が建物を解体して更地にしたうえで、土地を引き渡す方法です。
空き家の立地や査定価格などをもとに、すぐに更地にするか「更地渡し」の約束にするかを考えてみてください。
不動産会社に買取を依頼する
不動産会社に買取を依頼して空き家を売却するのもひとつの手段です。
不動産会社に空き家の購入者を探してもらう「仲介」とは異なり、買い手が見つかるまで待つ必要がないためすぐに売却できます。
早いと1週間くらいで空き家を手放すことも可能です。
ただし、不動産会社に空き家を買い取ってもらうときは、売却金額は相場の5〜8割まで下がってしまうことを留意しておきましょう。
相場より低い理由は、不動産会社が物件を売るために行うリフォームの費用を差し引いているからです。
本来1,000万円で売れる物件は、買取だと500〜800万円になります。
不動産会社によって得意とする物件種類は異なります。
大手の不動産会社でも空き家の売買を得意としているとは限りません。
不動産会社のホームページを確認したり、支店に問い合わせたりして、空き家の取り扱い実績が豊富かを事前にリサーチしておきましょう。
買取を依頼する不動産会社は、空き家が建っているエリアにあるところがおすすめです。
なぜなら空き家がある地域の居住環境に詳しく、適切な価格で買い取ってもらえる傾向にあるからです。
複数の支店を持つ不動産会社でも、空き家が建っている場所にもっとも近い店舗に声をかけてみてください。
空き家バンクに登録する
空き家バンクとは、日本各地の「空き家を売りたい・賃貸物件にしたい人」と「空き家を買いたい・借りたい人」をつなぐインターネット上のサービスのことです。
自治体ごとにサイトを設けるほか、HOME’Sのような大手不動産情報サービスが全国の情報をまとめて紹介しています。
近年、都会から地方への移住や古民家を活かしたカフェのオープンなど、古い物件を活用する動きが活発化しています。
空き家を紹介できる人の数が限られている不動産会社と比べ、空き家バンクでは全国の空き家を探している人に見つけてもらいやすいのがメリットです。
空き家バンクには、物件の資産的な価値に関わらず無料で情報を掲載できます。
それに自治体が運営しているケースが多いので、利用するときも安心感がありますね。
自治体によっては補助金や助成金を用意しているところもあるため、積極的に利用していきましょう。
空き家バンクは良いことばかりと思ってしまいそうになりますが、売買契約やトラブル対応といった購入者とのやり取りは基本的にすべて自分で行います。
契約書類の不備やクレームが発生しても自治体や不動産会社に頼るのが難しい点は留意しておいてください。
一部ではありますが、独自に不動産会社に仲介を依頼したり、相談窓口を設けてたりしている自治体もあります。
不安な方は空き家バンクに物件を登録する前に、自分が売却したい空き家が建っているエリアのサポート体制を確認しておきましょう。
空き家の売却にかかる費用や税金
空き家を売却するときは、さまざまな経費がかかります。
空き家を売った場合の経費の目安は売却金額の5〜7%とされています。
500万円で空き家が売れた場合の経費は25〜35万円という計算になりますね。
それでは、空き家の売却にかかる費用や税金にはどのようなものがあるのでしょうか。
主なものをまとめてみました。
- 仲介手数料(不動産会社に依頼する場合)
- 片付け費用
- 解体費用(更地にする場合)
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
- 相続登記費用(相続した空き家を売却する場合)
片付けを業者に依頼したり、解体費用が思いのほか高額だったりして、目安よりも経費がかかることもあり得ます。
空き家を売却するときは、資金計画をしっかりと立てておきたいですね。
それでは、以下の見出しでそれぞれの費用や税金について詳しく解説します。
仲介手数料※不動産会社に依頼する場合
不動産会社に空き家の買取と売却を依頼した場合、売却が成立したら成果報酬として仲介手数料を支払います。
仲介手数料の金額は宅地建物取引業法第46条と国道交通省が発表している条件により、売却金額ごとに上限が設けられています。
仲介手数料の上限金額を、以下の表にまとめてみました。
売却金額 | 仲介手数料の上限金額(円) |
200万円以下 | 売買価格の5%+消費税 |
200万円から400万円以下 | 売買価格の4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売買価格の3%+6万円+消費税 |
まれに上限額より低い金額を請求する不動産会社もありますが、売却金額に関わらず上限額いっぱいの仲介手数料を請求するところがほとんどです。
なお、400万円以下で取引が成立した空き家に関しては「空家等の売買又は交換の媒介における特例」が適用され、不動産会社は「仲介手数料+必要経費」として上限18万円+消費税を売主に請求できるようになっています。
仲介手数料を払うタイミングは、売買の仲介契約を結んだときに半額、売却が成立したときに残りの半額を払うケースが多い傾向にあります。
複数の不動産会社に見積もりを依頼し、契約を結ぶ前に仲介手数料がいくらくらいになるかチェックしておきましょう。
片付け費用
空き家を売却するときは、家の中を掃除してから売ることがよくあります。
家の中を空にしておくと、買い手が片付けをする必要がないぶん高く売却できるケースがあるのです。
また、空き家が売れるまでの空き巣対策としても片付けは効果が期待できます。
空き家を片付けるときは、自力で行う方法と業者に頼む方法の大きく2種類があります。
自分で片付けるメリットは、あまり費用がかからないこと。
自治体の粗大ごみの回収料金は比較的低価格ですし、まだ使えそうなものはリサイクルショップやフリマアプリで売ることも可能です。
また要る物と処分したい物を自分で判断できるため、納得のいく片付けができます。
ただし大きな家具を動かすときにケガをしたり、思いのほか時間が掛かってしまいやすいのが自分で片付けるデメリットです。
できるだけ早く空き家を売却したいときや、家具の扱いが不安なときは業者に依頼する方が確実でしょう。
空き家の片付け業者は、主に以下のような作業を実施します。
- 要るものと不用品の仕分け
- 家具・家財の搬出
- 不要分の回収と処理
- 片付け後の簡単なクリーニング
業者への依頼費は作業内容や物件の広さによって大きく異なります。
また業者によっては庭の置物の処分や重要書類の捜索も行ってくれるところもあるので、いくつかの業者に見積もりをしてもらい、納得できる業者と契約しましょう。
解体費用※更地にする場合
空き家を解体し、更地にして売却する場合は解体費用がかかります。
建物の構造や老朽化の程度、業者によって費用が異なりますが、おおよその目安は以下の表の通りです。
建物の構造 | 費用の目安(1坪あたり) |
木造 | 40,000円 |
鉄骨造 | 60,000円 |
鉄筋コンクリート | 70,000円 |
空き家を解体するときは、解体費用以外にも廃棄物の処理費や現場管理費など、さまざまな経費がかかります。
地中に埋まっている浄化槽を取り出して廃棄するときや、立地の都合で警備を依頼するときは追加で費用がかかることも。
解体費用を計算するときは、建物だけでなく地中に埋まっているものや周辺環境なども加味するようにしましょう。
やはり解体費用は高額になりがちです。
木造の30坪の空き家の場合、解体費用は約120万円かかる計算になります。
そこで活用したいのが、自治体が用意している補助金や助成金です。
条件や金額は自治体によって異なりますが、解体費用の10〜30%が支給されることもあります。
空き家が建っている自治体に補助制度がないか、ぜひ調べてみてください。
印紙税
印紙税も、空き家を売却するときにかかる費用のひとつです。
印紙税は空き家を含む不動産を譲渡するための契約書を作成し、契約金額が10万円を超えたときに発生します。
印紙税の額は契約金額によって異なっており、本来は400円〜です。
しかし平成26年4月1日から令和6年3月31日の間に作成する契約書に関しては、税金が軽減されます。
契約金額ごとの印紙税の金額は以下の表の通りです。
契約金額 | 本来の印紙税の金額 | 軽減後の印紙税の金額 |
10万円超~50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超~100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超~500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超~1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超~5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超~5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超~10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超~50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
契約金額が1億円以下の場合の印紙税額は、本来の金額の半分になります。
売買金額が変更になったときに作成する変更契約書や補充契約書も、印紙税の軽減の対象です。
登録免許税
登録免許税とは、登記内容を変更する際に支払う税金のことです。
不動産を売買するときは、法務局の登記簿に記載されている建物の所有者を変えなければなりません。
この所有者を変更する手続きのときに、登録免許税が課せられるのです。
一般的には購入者が負担するケースが多いのですが、空き家に抵当権が付いている場合は売主が「抵当権抹消登記」をしなければなりません。
抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
司法書士に抵当権抹消登記の手続きを依頼する場合は1〜2万円の依頼費もかかります。
譲渡所得税
土地や建物などを売却して発生した所得のことを「譲渡所得」と呼び、この譲渡所得にかかる税金を「譲渡所得税」と言います。
譲渡所得税の金額を算出するときは、はじめに譲渡所得額を計算し、その後に一定の税率を掛けるのが一般的な流れです。
譲渡所得額は、下記の計算式で算出されます。
譲渡所得額=物件が売れた金額-(物件の取得費+売却時の諸費用・経費)-特別控除額
物件の取得費には購入価格や建築代金、売却時の諸費用・経費には仲介手数料や印紙税などを加算することが可能です。
もし取得費が分からないときや取得費が「収入金額×5%」を下回る場合は、物件が売れた金額の5%を取得費として計上できます。
この計算式を用いて譲渡所得が発生した場合は、譲渡所得税が課されます。
譲渡所得の金額を算出し、譲渡所得が発生したら譲渡所得税額の計算に取り掛かります。
譲渡所得税額の算出に使う税率は物件の所有期間によって異なるため、間違えた数字を掛けないよう注意しましょう。
所有期間と税率は、以下の表の通りです。
所有期間 | 税率 |
5年以下 | 39.63% |
5年超 | 20.315% |
所有期間の長さは、譲渡した年の1月1日時点の所有期間を基準としています。
物件を取得したのが2019年4月1日・売却したのが2024年5月1日で5年超所有したつもりでも、税務上は5年以下という解釈になるので気を付けてください。
税率に小数点以下が含まれている理由は、復興特別所得税の税率も反映されているからです。
なお、この復興特別所得税は令和19年(2037年)まで続く予定です。
相続登記費用※相続した空き家を売る場合
相続によって取得した空き家を売る方は、相続登記費用もかかります。
相続登記とは、不動産の名義を亡くなった方から相続した人に移す手続きのことです。
相続登記することで相続した人が新しい名義人であることが明確になり、はじめて空き家を自分の所有物件として扱えるようになります。
空き家の名義が亡くなった方のままだと、空き家の売却はできません。
誰が名義人なのか分からないときは、法務局で登記簿謄本を取得して確認しましょう。
相続登記に必要な書類と発行手数料の目安を、以下の表にまとめてみました。
書類 | 発行手数料の目安 |
戸籍謄本 | 450円/通 |
除籍謄本 | 750円/通 |
改製原戸籍謄本 | 750円/通 |
戸籍の附票の写し | 300円/通 |
住民票の写し | 200~300円/通 |
印鑑証明書 | 200~300円/通 |
固定資産評価証明書 | 200~400円/通 |
書類の発行手数料は、自治体によって異なります。
詳しくは各自治体の窓口に問い合わせてみてください。
相続登記は自分でもできますが、手続きや書類の準備が不安なときは司法書士に依頼することもできます。
司法書士に相続登記を依頼する場合は5〜8万円、戸籍収集や遺産分割協議書の作成もまとめて依頼するときは7〜15万円が相場です。
空き家の売却にかかる税金と費用を抑える方法
空き家を売却するときは数十万、場合によっては100万円以上の経費がかかることがわかりました。
ある程度は空き家の売却額で相殺できますが、場合によっては売却益だけでは賄えないことだってあり得るでしょう。
少しでも税金と費用を抑え、経済面での負担を軽減する方法はないのでしょうか。
経費の高さに少し尻込みしてしまった方も、安心してください。
国や自治体が特例や補助金制度を用意していますし、自分の工夫次第でかなり費用・税金を下げられます。
今回紹介する税金と費用を抑える方法は、以下の6つです。
- 3,000万円特別控除の特例を使う
- 自治体の補助金を利用する
- 取得費加算の特例を利用する
- 10年超所有の場合の軽減税率特例を利用する
- 過去に利用したことのある不動産会社を利用する
- 片付けや不用品処分は自分で行う
3,000万円特別控除の特例については、自分が控除の対象になるかが分かるチェックシートも紹介しています。
それでは、それぞれの方法について詳しく解説します。
3,000万円特別控除の特例を使う
相続や遺贈によって取得した空き家を売却する方は、一定の条件を満たせば3,000万円特別控除の特例を使用できます。
3,000万円特別控除の特例とは、空き家を売却したときの譲渡所得(売却益)から、最大3,000万円を控除できる制度のことです。
本来、土地や建物などの不動産を売却したときは譲渡所得税が発生します。
しかし空き家が社会的な問題になっている昨今、税金の高さを理由に空き家を放置することを減らすため、課税を抑える制度ができました。
3,000万円特別控除の特例を使うと、3,000万円以下で売れた空き家に関しては譲渡所得税が0円になります。
売却益に対し、空き家の保有期間が5年以下だと39.63%、5年超だと20.315%もかかる譲渡所得税がタダになるのはとても嬉しいですよね。
3,000万円特別控除の特例を使うには、以下のような条件をすべて満たす必要があります。
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物である
- 区分所有建物登記がされている建物(マンション)ではない
- 相続の開始の直前、被相続人(亡くなっ方)以外に居住をしていた人がいない
- 売却する人が、相続または遺贈で空き家を取得した
- 売却代金が1億円以下である
- 空き家を購入した人は第三者である
ほかにもさまざまな条件があるので、詳しくは国税庁の公式サイトや国税庁が公開しているチェックシートをもとに確認しましょう。
3,000万円特別控除の特例を使うときは、会社員も個人事業主も確定申告が必要です。
空き家を売却した次の年の2月16日〜3月15日の間に、必要書類を用意して税務署に提出しましょう。
自分がどこの税務署に書類を持って行けば良いかは、国税庁の専用ページで郵便番号もしくは住所を入力すると分かります。
確定申告に必要な書類の作成が不安な方や、書類を作る時間の余裕がない方は、税理士に依頼するのもおすすめです。
空き家の3,000万円控除のチェックシート
3,000万円の特別控除の特例はとても便利な制度ですが、自分が売却したいと考えている空き家が特例の対象となるか判断するのは難しいですよね。
そんな時は、国税庁が公開しているチェックシートを使ってみましょう。
質問に「はい」か「いいえ」で答えるだけで、自分には3,000万円特別控除の特例が適用されるか分かります。
特例を利用するために必要な書類の一覧も掲載されているので、とても便利です。
ただし年によって条件が一部変更になるケースがあるため、必ず最新版のものを使うよう心掛けましょう。
3,000万円特別控除の特例を使いたい方は、ぜひ国税庁のチェックシートを活用してみてください。
自治体の補助金を利用する
空き家を解体し、更地にしてから売却するときは自治体の補助金を利用してみましょう。
基本的には市区町村ごとに補助金制度を設けており、それぞれ補助内容が異なります。
自治体ごとの補助金制度の一例は、以下の表の通りです。
自治体名 | 補助内容 |
札幌市 | 最大50万円を補助 参考:令和5年度札幌市危険空家等除却補助制度 |
仙台市 | 上限50万円とし、対象経費の3分の1を補助 参考:仙台市特定空家等除却促進補助事業 |
墨田区(東京都) | 上限50万円とし、対象経費の2分の1を補助 参考:老朽危険家屋除却費等助成制度 |
名古屋市 | 「老朽危険空家等の評価」表の危険度に応じて上限金額を判断
75点以上:上限40万円とし、対象経費の3分の1を補助 125点以上:上限80万円とし、対象経費の3分の2を補助 |
神戸市 | 上限60万円とし、対象経費の3分の1を補助 参考:老朽空き家等解体補助制度 |
広島市 | 最大50万円を補助 参考:広島市老朽危険空家等除却補助制度 |
福岡市 | 最大100万円を補助 参考:福岡市空き家活用補助金 |
自治体によっては年ごとの予算額が決まっており、予算額に到達したら受付を終了するところもあります。
また空き家の解体費用の補助は行っておらず、代わりにリフォーム費の補助を用意しているところも。
空き家の売却に使えそうな補助金制度は自治体ごとに大きく異なるため、詳しくは空き家が建っている自治体の窓口に問い合わせてみてください。
取得費加算の特例を利用する
相続もしくは遺贈によって空き家を入手した方は、取得費加算の特例を活用することも検討してみましょう。
取得費加算の特例とは、相続・遺贈によって取得した土地や建物を一定期間内に譲渡したとき、支払った相続税の一部を譲渡資産の取得費に加算できる制度です。
空き家を含め、不動産を売却したときは売却益に「譲渡所得税」という税金がかかります。
譲渡所得税の計算式は、「物件が売れた金額-(物件の取得費+売却時の諸費用・経費)-特別控除額」です。
取得費加算の特例は、物件の取得費のなかに相続税の一部を加算し、譲渡所得税を軽減する制度といえます。
空き家を売却するときに取得費加算の特例が適用される要件は、以下の3つです。
- 相続や遺贈により空き家を取得した人が申請する
- 空き家を取得した人本人に相続税が課税された
- 空き家を相続が開始した日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却している
一番最後の日程の要件は少し難しいですよね。
一例として、2023年6月1日に相続が開始した場合のスケジュールを以下の表にまとめてみました。
2023年6月1日 | 空き家の所有者が亡くなり、相続開始 |
2024年4月1日 | 相続税の申告期限
(この日までに相続税の申告と納付を完了させる) |
2027年4月1日 | 空き家の売却を完了させる |
取得費加算の特例を使うときは、書類を用意して税務署で確定申告します。
確定申告の期限は、空き家を売却した年の翌年の2月16日〜3月15日までです。
例えば2023年の間に空き家を売却した場合、確定申告の期限は2024年2月16日〜2024年3月15日になります。
書類の作成や金額の計算が難しそうなときは、税理士に依頼してみてください。
10年超所有の場合の軽減税率特例を利用する
10年以上空き家を所有している方も、軽減税率特例を利用できる可能性があります。
所有期間が10年を超えた空き家を売った場合、譲渡所得税の金額は以下の表のように算出され、譲渡所得税の金額を軽減できますよ。
譲渡所得金額 | 税額の算出方法 |
6,000万円以下 | 譲渡所得金額×10% |
6,000万円超 | (譲渡所得金額-6,000万円)×15%+600万円 |
本来、所有期間が5年を超えている不動産を売ったときは売却益に対して20.315%の税金がかかります。
譲渡所得金額が500万円の場合の譲渡所得税額は101万5750円です。
しかし所有期間が10年を超えていたら50万円で済みます。
支払う譲渡所得税が半額以下になるのは大きいですよね。
もちろん、この10年超所有の場合の軽減税率特例にも利用するための一定の条件が設けられています。
特例を利用するには、以下の5つの条件をすべて満たさなければなりません。
- 日本国内にあり自分が住んでいる家屋もしくは家屋と土地の両方を売却する
- 売った年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている
- 売った年の前年・前々年に同じ特例を利用していない
- マイホームの買換えや交換の特例など他の特例の適用を受けていない
- 親子や夫婦など「特別な関係」の人には売却していない
空き家を売却する方は、「日本国内にあり自分が住んでいる母屋もしくは母屋と土地の両方を売却する」という条件が気になるのではないでしょうか。
自分が住んでいる不動産を売ることを前提とした条件ですが、住まなくなった日から3年経過する日が属する年の12月31日までに売れたら、空き家を売却したときでも特例を受けられます。
また、空き家を取り壊して更地にしてから売るときは、以下の条件を満たしているかも確認しておきましょう。
- 家屋が取り壊された日が属する年の1月1日において所有期間が10年を超えている
- 譲渡契約が家屋を取り壊した日から1年以内に締結される
- 住まなくなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売る
- 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、他の用途で敷地を使っていない(駐車場など)
空き家を売却するときも、空き家を更地にしてから売却するときも、人が住まなくなってから3年以内に売却の手続きをすべて終えることが求められます。
「空き家を売ろう」と思い立ったら、すぐに行動に移した方が良さそうです。
10年超所有の場合の軽減税率特例を利用するときも、書類を揃えて所轄税務署で確定申告する必要があります。
確定申告の期間は、売却した年の翌年の2月16日〜3月15日です。
なお、この10年超所有の場合の軽減税率特例は3,000万円の特別控除の特例と併用できます。
売却益が高額でもかなり減税されるので、ぜひ併せて活用してみてください。
過去に利用したことのある不動産会社を利用する
過去に利用したことのある不動産会社を、空き家の売却の時にも利用することで、リピート割を利用できることがあります。リピート割では、仲介手数料を割引いてもらえることがよくあります。
不動産会社にもよりますが、割引率は20%前後のところが多いようです。
今まで自分がマイホーム購入で利用した不動産会社や、賃貸契約を結ぶときお世話になった不動産会社がリピート割を実施していないかぜひ問い合わせてみてください。
片付けや不用品処分は自分で行う
片付けや不用品の処分を自分で行うのも、空き家の売却にかかる費用を抑える手段として有効です。
業者に頼むと素早くきれいに片付けてもらえますが、やはりそれなりの料金がかかります。
3LDKを超える広い空き家を片付けるとなると料金が20万円以上のところも多いですし、ハウスクリーニングや家財の梱包といったオプションを付けるとさらに高額になります。
もし自分たちで家具や家財の処理ができ、時間に余裕があれば自力で片付けてみるのもおすすめです。
要る物と要らない物をじっくり検討しながら片付けられるため、納得できる状態で空き家にできます。
まだ使えそうな物はリサイクルショップ・オークション・フリマアプリなどで売ると、ちょっとしたお小遣いを稼げるかもしれませんよ。
また、書籍・衣服・雑貨・調理器具といった小物類は自力で片付け、テーブルや棚など大型家具の処分のみ業者に頼むのもひとつの方法です。
作業の一部を業者に任せるだけですから料金を抑えやすいですし、小物類を売ったお金は業者への依頼費に充てることだって可能です。
片付けに充てられる時間や空き家の状態に応じ、自力での作業と業者への依頼を上手に組み合わせてみましょう。
空き家を売却する際の注意点
空き家を売却するためには、片付けや売買契約の締結などいくつもの手順を踏まなければなりません。
加えて売却するためには数十万円以上の税金・費用がかかりますから、スムーズかつ低コストで空き家を売るにはさまざまなことに注意を払う必要があります。
そのなかでも特に気を付けたいのが、以下の5つの項目です。
- 不動産の名義が自分になっているか確認する
- 建物・設備・地盤の状態を確認する
- 更地にするなら1月2日〜
- リフォームや建物の撤去は不動産会社に相談する
- 空き家になった日から3年以内に売却に出す
注意点をしっかりと把握したうえで準備して、納得できる形で空き家を売却しましょう。
それぞれの注意点について、以下の見出しで詳しく解説します。
不動産の名義が自分になっているか確認する
祖父母や両親から相続した空き家を売却するときによく発生するのが、名義人の変更のし忘れです。
空き家に限らず、不動産を売却するには名義人が自分になっていなければなりません。
名義人の変更ができていないと売却の手続きに取り掛かれないので、早めに確認しておきましょう。
空き家の名義人が自分になっているかどうかは、権利証・登記識別情報・登記事項証明書のいずれかで確認できます。
権利証と登記識別情報はデータベース上で管理されており、パスワードがないと閲覧できません。
パスワードが分からない場合は、法務局で登記事項証明書を取得しましょう。
法務局に出向いて取得の手続きをするのも良いですし、法務局のホームページで申請して郵送してもらうことも可能です。
空き家の名義人が自分になっていない場合は法務局で相続登記をして名義を変更します。
相続登記は自分で書類を収集・作成して提出できますが、複雑なため手続きが不安・面倒な方は司法書士(報酬相場:5〜8万円)に依頼するのがおすすめです。
建物・設備・地盤の状態を確認する
空き家を売却する前に、建物・設備・地盤の状態をしっかりと確認しておきましょう。
空き家の場合は建ってから時間が経過しており、建物が傷んでいたり設備が古くなったりしている傾向にあります。
見落としていた不備が売却後に見つかった場合、契約不適合責任に問われる可能性があるため隅々までチェックしておきましょう。
契約不適合責任とは、売買契約に基づいて取引されたものに関して契約内容との違いがあったとき、売った人が買った人に対して負担を負う法的責任のことです。
空き家の場合は白アリや雨漏り、建付けの悪さなどが売却完了後に判明し、後になって損害賠償を求められることがあります。
欠陥があることをわざと伝えていなかったときはもちろん、故意でなかった場合も責任が問われるので注意しましょう。
契約不適合責任の対策方法は、空き家を売却する前に住宅診断(ホームインスペクション)を受けておくことです。
住宅診断では、物件の劣化の状態や欠陥などを専門家が診てくれます。
日本ホームインスペクター協会の公式サイトによると、費用の目安は以下の表の通りです。
目視による一次診断 | 5~6万円前後 |
機材を使用する詳細診断 | 10万円以上 |
空き家の規模にもよりますが、所要時間は2〜3時間とされています。
契約不適合責任に問われないようにするための保険として、売却前に一度受託診断を受けておくことをおすすめします。
更地にするなら1月2日〜
更地にしてから売却する場合は、1月2日以降に空き家を取り壊すようにしましょう。
1月2日以降の取り壊しを推奨する理由は、固定資産税と都市計画税の税額に関わるからです。
固定資産税は、毎年1月1日時点の状態をもとに判断します。
1月1日に建物が建っている状態だと固定資産税の減税措置が適用されるのですが、建物を取り壊して更地になっていると適用されません。
更地だと家が建っているときより固定資産税が3〜6倍、都市計画税は3倍になります。
空き家を取り壊して更地にしてから売却するときは、以下のスケジュール表を参考に行動してみてください。
1月1日 | 固定資産税・都市計画税を判断する日
空き家が建っている状態だと減税措置が適用される |
1月2日~12月31日 | 空き家の取り壊し・売却を完了させる |
12月31日までに更地にできても、売却できていないとその土地の所有者は自分のままなので、軽減措置が取られていない状態で固定資産税と都市計画税が課せられます。
空き家の取り壊しだけでなく、売却も12月31日までに完了させましょう。
なかなか購入者が見つからない事態に備えて、1月2日を過ぎたら早めに更地にするのがおすすめです。
空き家を取得したタイミングや家庭の事情などの関係で、時間の余裕がないけれど早めに空き家を売却したいときは、「更地渡し」の約束を使うことも検討してみてください。
「更地渡し」とは、買い手が見つかってから土地を更地にして売却する方法です。
スピーディーに更地を売却しつつ税金対策もできる、とても便利な手段ですよ。
リフォームや建物の撤去は不動産会社に相談する
空き家のリフォームや建物の撤去は、自己判断ではなく不動産会社に相談してから行うことをおすすめします。
なぜなら、リフォームや建物の撤去をしたところで空き家を売却できる保証はどこにもないからです。
空き家を売れやすくするために手を加えても、結局売れなかったら工事費がかかるだけで赤字になる可能性があります。
それに、購入した空き家をどのように扱うかは購入者次第です。
よかれと思ってリフォームしても、購入者が「このままでは過ごしにくいな」と判断したらさらに改装されたり、場合によっては更地にされたりするケースがあり得ます。
また更地には固定資産税と都市計画税の減税措置が適用されないため、建物を撤去したまま売れ残ると支払う税金の金額だけが増えてしまいます。
近年は古民家暮らしやDIYの流行により、自分の手でリフォームすることに魅力を感じている購入者も増えつつあります。
無駄な出費を抑え、買い手のニーズに応えるためにも、空き家を売却するときはリフォームや建物の撤去をした方が良いか不動産会社に相談してくださいね。
空き家になった日から3年以内に売却に出す
譲渡所得税のことを考慮するなら、空き家になった日から3年以内に売却に出すよう心掛けましょう。
理由は、空き家を3年以内に売却したら以下の軽減税率の特例を利用できるからです。
- 3,000万円特別控除の特例
- 10年超所有の場合の軽減税率特例
いずれの特例も、利用できる期間は建物が空き家になった日・空き家を相続によって取得した日から3年以内と定められています。
特に、3,000万円特別控除の特例の節税効果は大きいです。
空き家の売却額が3,000万円以下なら、譲渡所得税がかからなくなります。
空き家の売却にかかる費用を削減するためにも、できるだけ早く売却活動をスタートし、3年以内に売却を完了させることを目指しましょう。
空き家売却の流れ
空き家を売却する方法や売却にかかる費用、費用の抑え方などを把握できたら、いよいよ売却に向けて動き始めます。
空き家を売却する方法によって手順が少々異なるので、今回は以下の3つに分けて解説しますね。
- 中古住宅・古家付き土地、更地として売却する場合
- 不動産会社に買取を依頼した場合
- 空き家バンクに登録した場合
それでは、それぞれの流れを詳しく見ていきましょう。
中古住宅・古家付き土地、更地として売却する場合
まず紹介するのは、中古住宅・古家付き土地、更地として売却するパターンです。
中古住宅・古家付き土地は空き家を解体する手間が省けますし、更地にすると売れやすくなることもあり、多くの人が選択する手段です。
中古住宅・古家付き土地・更地を売却するときは、以下のような流れで手続きをします。
- 査定の依頼
- 仲介会社を決める
- 売り出し価格の決定
- 売却活動スタート
- 買い主との交渉
- 売買契約を結ぶ
- 引き渡し・決済
空き家を売却することを決めたら、どのくらいの価格で売れるのかを知るため、専門業者や不動産会社に査定額を出してもらいます。
査定額は業者によって若干異なるため、複数の会社に依頼するのがおすすめです。
実際に空き家を見に来てもらうとより具体的な査定額を出してもらえますよ。
査定しやすいよう、空き家の中はきれいに片付けておきましょう。
空き家の査定額が判明したら、不動産仲介業者と媒介契約を結びます。
不動産仲介業を営む会社はたくさんあるため、空き家の売却の実績が豊富なところを選びましょう。
なお、媒介契約には一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があります。
それぞれ契約内容が異なるので、よく確認したうえで契約を結んでみてください。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | ||
依頼主 | 同時に複数の業者に依頼 | 可能 | 不可能 | 不可能 |
自分で取引相手を見つける
(自己発見取引) |
可能 | 可能 | 不可能 | |
業者 | 依頼主への報告義務 | 不要 | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
指定流通機構への物件登録義務 | 不要 | 7日以内 | 5日以内 | |
契約の有効期間 | なし | 3カ月以内 |
※指定流通機構への物件登録の期限は休業日を除く日数
媒介契約を結んだら、空き家・更地の売り出し価格を決めます。
高すぎると買い手が見つかりにくくなりますし、安すぎると相場より低い価格で売れてしまう可能性があるため、担当者と相談しながら慎重に決めてくださいね。
売却活動が始まり、不動産会社や情報サイトで紹介されるようになると、内覧を希望する人が現れる可能性があります。
特に中古住宅・古家付き土地で売ることを考えている方は、売却活動が始まるまでには空き家をきれいに片付けて他の人に見せられる状態にしておきましょう。
売却活動を進めていると、購入希望者から「もう少し安くできないか」「リフォームが終わっている状態で買い取りたい」といった要望を伝えられるケースがあります。
自力での交渉が難しいときは、媒介契約を結んでいる仲介業者に任せるのもひとつの手段です。
買い主と自分の両方が納得できる条件が揃ったら、売買契約を結びます。
契約書類の作り方や細かい手続きの流れなどは不動産会社の担当者が教えてくれるので、指示に従って行動しましょう。
すべての書類が完成し、空き家・更地の引き渡しと買い主からの振り込みを確認できたら売却完了です。
空き家や更地の売却が完了するまでには、6カ月以上かかるケースがよくあります。
固定資産税と都市計画税のことを考えるとその年の1月2日〜12月31日までに売却を完了させた方が良いため、できるだけ早く行動に移すことをおすすめします。
不動産会社に買取を依頼した場合
不動産会社に買取を依頼すると買い手を見つける手間が省けるため、すぐに空き家を売却できます。
空き家のリフォームは買取後に不動産会社が行うので売却価格は相場よりも下がってしまいますが、できるだけ早く空き家を手放したい方にはおすすめの方法です。
不動産会社に買取を依頼した場合の流れを、以下にまとめてみました。
- 査定・買取を依頼する不動産会社を探す
- 空き家の調査・査定
- 買取金額の提示
- スケジュールの打ち合わせ
- 売買契約を結ぶ
- 空き家の引き渡し・決済
まずは、査定を依頼する不動産会社を探します。
相場より安い査定額で契約してしまうのを防ぐため、複数の会社に査定を依頼し、自分でも相場を調べるようにしましょう。
物件の相場は、各不動産会社公式サイトの査定ツールや国土交通省の土地総合情報システムなどから調べられます。
査定を依頼する不動産業者を決めたら、空き家の調査と査定を行います。
実際に空き家を見に来てもらい、立地・劣化の状況・室内の状態を確認することが多いため、調査しやすいよう家の中を片付けておくと良いですよ。
査定が終わると、不動産会社が買取価格を提示します。
もし買取価格について気になることがあれば、「他社だと〇〇円だったのですが・・・」「私の手元に残るのは何円くらいですか?」とどんどん質問して構いません。
他社との査定額を見比べて高く売れそうだと判断したら買取価格を上げてもらえる可能性がありますし、不明点を1つでも減らしておいた方が気持ちよく契約手続きに進めるでしょう。
査定を依頼した会社からの買取価格が出そろったら、空き家を売却する不動産会社を決めます。
空き家を売却する不動産会社とは、今後の買取スケジュールを打ち合わせたり必要書類について説明を受けたりします。
空き家の引き渡しまでには家の中を空っぽにして、公共料金の支払いも済ませておきましょう。
必要書類を準備できたら売買契約を結び、空き家の引き渡しと決済を確認できたら取引終了です。
不動産会社による空き家の買取は、早いと1週間程度で査定から売買契約まで完了することがあります。
スピード重視で空き家を売却したい方は、不動産会社への依頼を検討してみてください。
空き家バンクに登録した場合
納得できる価格で売却できるか分からない、購入者が見つかるまで時間が掛かりそうだと思ったときは、空き家バンクに物件情報を登録することも検討してみましょう。
空き家バンクは、空き家を売りたい人と買いたい人を繋ぐ情報サイトです。
基本的な利用料は無料で、資産価値に関わらずほとんどの物件は登録できます。
一般的に、空き家バンクへの物件の登録は空き家の所有者本人が行います。
物件の登録から売却までの流れは以下の通りです。
- 空き家がある自治体に空き家バンクの申請書を提出
- 自治体などの担当者が空き家の調査を実施
- 問題がなければ空き家バンクに登録
- 空き家バンクのホームページや自治体の窓口に物件情報が掲載される
- 空き家を買いたい人が見つかる
- 購入希望者が物件を見学する
- 問題なければ売買契約を締結
まずは、自治体に空き家バンクの申請書を提出します。
現在は書類申請だけでなくネット申請で受け付けているところもあるので、空き家が建っている自治体を調べてみましょう。
申請書を提出したら、自治体などの担当者が空き家の状態を調査します。
建物の劣化の状況や設備、立地などから、掲載の可否や売却価格などを検討します。
問題なければ空き家バンクに掲載され、日本中の人が情報を閲覧できるようになりますよ。
空き家を買いたい人が見つかったら、売却者本人のところに連絡が届きます。
内覧の日程調整や価格交渉などは自力で行うケースが多いので、しっかりと準備しておきましょう。
内覧の際は物件の状態を分かりやすくするため、きれいに掃除したり説明しておきたい事柄をまとめたりして準備を整えてみてください。
手順4以降は自治体が関与せず、すべて自力で対応するケースがよくあります。
手続きをスムーズに進め、トラブルを予防するためにもきちんと準備を整えることが大切です。
自治体によっては専門業者に仲介を依頼しているところもあるので、ぜひ調べてみてください。
空き家の売却に関するよくある質問
空き家の売却は、多くの人は一生に一度くらいしか経験することがない大きな出来事です。
数百万円、場合によっては1,000万円以上ものお金が動きますから、不安は尽きませんよね。
そこで、ここでは空き家の売却に関するよくある質問に回答します。
今回お答えするのは以下の4つの質問です。
- 空き家の売却の相談先は?
- 田舎の空き家を売る方法は?
- 空き家の売却相場を知るには?
- 空き家を売却するメリットはなんですか?
どれも空き家の売却に取り掛かると、ふと思い浮かぶ疑問ばかりです。
早めにひとつでも多くの疑問を解消し、スムーズに売却活動を進めましょう。
それぞれの質問に対する回答は、以下の見出しに掲載しています。
空き家の売却の相談先は?
空き家を売るときは、「空き家を売却するか迷っている」「空き家を売却する流れがよくわからない」など、自分だけで解決するのが難しい悩みがたくさんありますよね。
誰かに相談して、悩みを解消したいと感じることは多いでしょう。
空き家の売却の相談先は悩みの内容によって異なります。
主な相談先を以下の表にまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。
悩みの内容 | 相談先 |
空き家を売却するか迷っている | 不動産会社・自治体・家族・親戚(・金融機関) |
相続した空き家を売却したい | 司法書士・行政書士 |
空き家を取り壊して更地にしたい | 不動産会社・解体業者 |
売却手続きの流れが分からない
必要な書類を知りたい |
不動産会社 |
空き家の売却について悩みがある方は、相談したい事柄を問わず、まずは不動産会社に相談してみましょう。
空き家を売却するか迷っているときは価格相場や取引実績といった判断材料を提供してくれます。
また立地や建物の状態によっては空き家を取り壊さない方が売れるケースもあるので、更地にする前に不動産会社に声を掛けてみてください。
書類の準備と売却手続きは不動産会社のサポートのもとで行うのが一般的です。
もし相続や遺贈によって取得した空き家を売るときは、家族や親戚にも一度声をかけておきたいところ。
家族で長年過ごした思い出が詰まっている建物ですし、もしかすると「じゃあ私が住みます」と申し出てくれる人がいるかもしれません。
空き家のローンが残っている場合は、金融機関への相談も忘れないようにしましょう。
相続した空き家を売却するときは、法務局で名義を変更しなければなりません。
自分で手続きをしても良いのですが、難しそうだと感じたときは司法書士や行政書士といった専門家に相談してみてください。
空き家を取り壊して更地にすることを決めたら、解体業者に工事の内容や日程について相談しましょう。
複数の業者に見積もりを依頼して、納得できる価格のところに工事を発注することをおすすめします。
もし複数の不動産会社から「査定の結果、この空き家を売るのは難しいと思います」と言われたら、自治体に相談するのがおすすめです。
自治体によっては空き家バンクを運営しているところや、寄付制度を設けているところがあります。
行動するうちに解決の糸口はきっと見つかるので、あきらめず色々なところに相談してみてくださいね。
田舎の空き家を売る方法は?
相続などにより田舎の空き家を取得したものの、住む予定がないから売却したいと考えている人もいるでしょう。
しかし田舎は少子高齢化の影響で物件の需要が減少していますし、立地・生活環境の面から都会よりも空き家が売れにくいと言われています。
とはいえ固定資産税を払い続けるのも困りますし、何か良い方法はないのでしょうか。
田舎の空き家を売りたいときは、以下の3つの方法を試してみてください。
- 空き家をリフォームする
- 空き家を解体&更地にして売却する
- 不動産会社に買取を依頼する
田舎の空き家は親や祖父母の世代から代々受け継いで住んでいるものが多いため、傷んでいる箇所がたくさんあると思われます。
そのため、売却前にリフォームして外装・内装や設備をきれいにしておくのです。
住み心地のよい状態にしておくと、移住希望者に売却できる可能性がグッと上昇するでしょう。
不動産会社との相談の末、空き家の需要がない・売却できる見込みがないと判断されたときは、更地にして売却します。
購入者が自由に土地を扱えることから、需要が増えやすく、空き家として売却するよりも高値で売れる可能性も高まります。
解体費用がかかりますが、ほとんどの自治体は補助金制度を設けているのでチェックしてみてください。
不動産会社に仲介してもらって購入者を見つけるのが難しい場合は、不動産会社そのものに買取を依頼するのもひとつの手段です。
田舎にある空き家の買取に力を入れている会社や、実績が豊富なところだと成約しやすくなります。
空き家の売却後に不動産会社が管理・リフォームすることが前提のため、買取価格は相場より安いケースがほとんどですが、少しでも早く空き家を手放したい方にはおすすめの手段です。
空き家の売却相場を知るには?
空き家を相場より安い金額で買いたたかれないようにするためにも、売却相場をきちんと理解しておくことは大切です。
特に空き家バンクで売却するときは自分で価格交渉に対応するケースがほとんどなので、「これ以上は下げられない」というボーダーラインを設けるためにも売却相場の把握は必要不可欠です。
空き家の売却相場は、主に以下の3つのサイトで調べられます。
- 不動産ポータルサイト
- REINS Market Information
- 土地総合情報システム
不動産ポータルサイトとは、SUUMOやHOME’Sのような物件情報をまとめて掲載しているWebサイトのことです。
自分が売却したい空き家と同じエリア・同じ間取りで絞り込み検索すると、おおよその売却相場を把握できます。
REINS Market Informationは、国土交通大臣が指定した「不動産流通機構」という組織が運営している情報システムです。
不動産の取引実績を自治体ごとに掲載しています。土地の面積・物件の間取り・築年数・最寄駅からの所要時間など、詳細な絞り込み検索をしたうえで売却価格を調査できます。
土地総合情報システムは、国土交通省が運営している情報システムです。
実施に行われた不動産の取引価格だけでなく、査定の基準となる標準地・基準地の価格まで調べられます。
取引に要した期間まで掲載されているので、売却時のスケジュールもイメージしやすくなりますよ。
空き家を売却するメリットはなんですか?
そもそも、空き家を売却するメリットは何なのでしょうか。
「家族との思い出が詰まった家だから売るのは気乗りしない・・・」「手続きが面倒だな」と思い、なかなか行動に移せない方もいるかもしれません。
しかし、空き家の売却には大きな利点があるのです。
主なメリットとしては、以下の2つが挙げられます。
- 固定費・維持費の削減
- トラブルの防止
空き家に限らず、不動産を所有している間は固定資産税がかかります。
立地によっては都市計画税も課せられるため、一戸建てなら毎年10〜15万円を支払うケースも少なくありません。
また破損・倒壊防止のため定期的にメンテナンスするにしても、資材を購入するときや業者に依頼するときのお金は維持費として払い続けることになります。
また、空き家の売却はトラブルの防止にも効果的です。
空き家に関するトラブルとしては以下のようなものが挙げられます。
- 隣の家の敷地まで木の枝が伸びる
- 手入れ不足による景観の悪化・異臭の原因
- 知らない人や泥棒が勝手に侵入する
- 破損・倒壊の危険性
空き家の様子をなかなか見に行けない人ほど、トラブルに巻き込まれやすくなります。
空き家の近隣住民からのクレーム対応には気を遣いますし、知らない人に勝手に入られるのはあまり気分の良いものではありません。
固定費・維持費を削減したい方や、トラブルの発生を防ぎたい方は空き家を売却することをぜひ検討してみてください。
空き家の売却方法まとめ
空き家を売却すると、固定費の削減や近隣住民とのトラブル防止に繋がります。
思い出が詰まった家を手放すのは少し心苦しいですが、自分が置かれている状況と照らし合わせて対応を決めてみましょう。
今回紹介した空き家を手放したい時の主な方法は、以下の4つです。
- 中古住宅・古家付き土地として売却する
- 更地にして売却する
- 不動産会社に買取を依頼する
- 空き家バンクに登録する
特例を活用して少しでも売却の経費を抑えるため、空き家を所有したら3年以内に売却手続きを完了させることをおすすめします。
更地にしてから売る場合は、1月2日以降に工事に取り掛かるようにしてください。
空き家の売却に関して分からないことや不安なことがあっても大丈夫。
不動産会社をはじめ自治体・司法書士・行政書士など、多くの専門家が空き家の相談に応じています。
空き家を売却するには6カ月以上もの時間がかかるケースがあるため、早めに準備を進めておくことが大切です。
少しずつ情報を集めて、納得できる形で空き家を売却しましょう。